長谷川白紙 2nd EP 「草木萌動」

サブスクで十分だしCD買うつもりなかったんだけど、特典が弾き語りと「肌色の川」と知って即予約。
f:id:senotic:20181224204559j:plain
ジャケットのイラストはご本人に似ていないが、尖った歯は特徴捉えてる。先月の古民家でのライブ は明るい場所で距離も近かったので口の中まで丸見え、えらい歯尖がってるなぁと思いながら見ていた。いつも口を隠すから余計に見てしまう。アイドルや女優さんが八重歯抜いちゃったりするとがっかりする。帯の裏側もペパーミントグリーン。パソコン音楽クラブのと違って、歌詞カードが入ってた。ポエムみたいな歌詞だから縦書きが合ってる。歌詞カードの裏側、長谷川白紙と草木萌動の文字が反転してる。CDの裏側にツイッターのURL。
長谷川白紙「前作のアイフォーン・シックス・プラス(Maltine Records)は、私の皮膚が鏡になったみたいに私と対峙しているようなものを私の中に取り入れようとする作品だったとすれば、今回の草木萌動というEPは私の中にあるものが何だったかということを考えて作った作品です。私にとって体の一部をそのままこうやってブチって切り取って、それにジャケットの素晴らしいデザインをして頂いて、それがそのままタワレコに並んでる感じです。」(Youtube Live「新曲発表会@寝床」)ルーツの中国要素が入っていたのは意外だった。やっぱり歌詞が難しい。ライブ前に歌詞覚え直すの大変そう。作品は長谷川白紙そのものということだから、簡単には理解させてくれないようになっているのかな。よく考え知識があればわかるかな。「/ジェルを抓(つね)る /それで薄めて叱る」わかるかっ。暗号か。
追記:長谷川白紙「この作品が全部一つの思想に基づくものではなくて、私の音楽的な身体性が何なのかというかどこから来てるんだろうっていう思いから作っていて、すごい癖というか私が元から覚えている動きにまみれてるアルバムなんですけど。そういう身体性みたいなものを提出するのを20歳のうちまでにやっといた方が、まぁ面白いんじゃないかなと思って。だいぶ何も考えずに、(そのままやりたいやつを手癖をそのまま出してみようみたいな。)結構理知的に作った曲もデモの段階ではあったんですけど、それは見送ろうってなった。あっ、そういう意味では結構コンセプチュアルかもしれないです。(歌詞が先ということはあまりなく)メロディ先行のことが多いです。私は作詞するときにこのメロディにこの言葉が絶対に乗ってなきゃいけないみたいなのが、前に何個か決まることが多くて、そこに合わせて歌詞を書くことが多いんですけど、そういうときは歌ってる時に歌詞とメロディが一緒に出てくることがあります。(基本はメロディ優先で、言葉が一緒に出てくることもある。)だいぶ純正音響的にやっているんですけど。」
長谷川白紙「「草木萌動」に収録されている作品については(楽譜を)起こしてる部分と起こしてない部分とあって、バッとやっちゃうとこっていうかピアノで弾きながら(歌いながら)これでいこうみたいなところはもちろん手が動いてるところはそのままやるんですけど。例えば1曲1個くらいそういう部分があるんですよね、「草木」のイントロのポリリズムであるとか、メロディのポリリズムであるとか、「毒」はたぶんないかな、「它会消失(ターフイシャオシー)」のメトリックモジューレーションとか、楽曲の根幹ていうか、これが楽曲の構造、一番重要な部分だな、要するに原動力となるようなものは楽譜に起こしてから考える場合が多いですね。手癖を完全に手癖だけでやってしまうと何も脈絡がないものになってしまうので1回楽譜で整理して、手癖で作るところもあって後から照合してじゃあ大丈夫だと。(譜面は)私の中では思考を整理するという目的ではかなり役立ってます。(譜面で起こす)割合的には時間でいうと20%とかもっと少ないかも。考えたいなと思うところは(譜面に)起こします、大体。」(12月27日マルチネ放送室β)ここまで

1. 草木
長谷川白紙「2016年にかいたファゴットのためのエチュードのバックテーマをほぼ丸ごともってきている」「私が好きなコードをめっちゃ使ってる」(Youtube Live「新曲発表会@寝床」)
MVが良かった。酒井直之さんの手の動きが太極拳に似ていて、たおやかで美しい。最後「草木萌動」自身の声でコーラスかぶせるところがよい。でも弾き語りの方が好き。トランペットの生音いいよね。トランペットって主張が強くて細かい表現ができない印象があったのだけど、この前のCharterhouse Recordsでのライブでも生音体感して、少し見方が変わってきた。
追記:長谷川白紙「(「草木萌動」というタイトルは)締め切りのほぼ直前くらいに(決めた)。「草木」ていう曲が私が作曲しているときの、心象風景みたいなのをこうなんとか具現化してみたいなと思ったのが「草木」の歌詞での試みなんですけど。私が曲を作ってるときに、1曲1回必ずあるみたいなやつじゃないんですけど、なんて言うのでしょう、色んな要素が繋がるというか、この作曲家がこれやっててここでうまくその様式が取り入れられて、合う言葉も偶然見つかって、色んなパーツがバチってはまることがあるんですよ。そのときになんか芽生えみたいな感情が私にあって、そういうのをうまくなんか表せる言葉がないかなぁと思ってそれが「草木萌動」だったんですけど、これって要するに身体性の一番強い発露の形だよなと気付いて、歌詞にもあるし、これが最もふさわしいタイトルなんじゃないかなと思って付けました。」
長谷川白紙「私がキーボードのソロを入れてもよかったんですけど、これだと完成した感じがあまりしないなと思って。最初からあの曲がデモ段階でこれトランペットのソロが絶対入るべきだなと思ってたので、今回石川広行さんという凄い方と。本当にいいソロでした。」(12月27日マルチネ放送室β)ここまで

2. 毒
こちらも弾き語りの方が好き。ブレイクコアって言うんですか?聴くと消耗する。「息に合わせ」の絞り出すような歌い方は面白い。関係ないけどパソコン音楽クラブのアルバムにToxicってあったな。

3. 它会消失(ターフイシャオシー)
白紙さんの音楽は影というか憂いを帯びている印象があるけれど、この曲の音は生き生きと楽しそう。「萌黄 早蕨」の歌い方がかっこいい。でも「它会消失」は「いつかは消える」らしい。まぁ、形あるものはなんだっていつかは消えるんだから。歌詞はわからないながらも、楽しい内容ではなく生き抜くということが書かれているような気がした。歌詞カードにない「イーアルサンツー、ホーヨーチィー」、「イーアルサンツー」は123だろうけれどその後は何を言ってるんだろう。

4. 妾薄命(チエバオミン)
李白の詩。翻訳探し出して読んだがへぇーとしか言えないな。愛と嫉妬?

妾薄命 李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350 -238 : 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之のブログ 女性詩、漢詩・建安六朝・唐詩・李白詩 1000首:李白集校注に基づき時系列に訳注解説

追記:長谷川白紙「它会消失(ターフイシャオシー)という曲が3曲目に入っているんですけどあそに中国語のカウントが使われてて、5曲目がYMOのキューじゃないですか。YMOにうまく接続することができなかったんですね、どの曲でも。そのときにどうしようかなと思ったときに、テクノポリスが最初に浮かんで、ああいう感じのロボットっぽい読み上げみたいな音声があればうまく繋がるんじゃないかな。3曲目と絡めて、中国語にしようと思って。(中国語のモチーフがあったわけではないが)中国語は絶対使おうと思ってたんですけど。」
長谷川白紙「詩のチョイスについては偶然。長さと音の感じと。読み上げソフトに私が知ってる漢詩を全部読み込ませて、これかなーみたいな。引用したとか、特にこれから影響を受けたとかはない。」(12月27日マルチネ放送室β)ここまで

5. キュー
EPの中で一番聴きやすい。スティールパンみたいないシンセの音。猟犬が吠えてる。歌い方が「肌色の川」に近い。「肌色の川」はYMOを意識した歌い方をしたそうだから、カバーであるこの曲もYMOっぽく歌ったということね。白紙さんは確かドラムも叩けたと思うので、叩きながら歌うの聴いてみたい。パソコン音楽クラブのYMOコンピの曲何だっけと思って聴き直したら、「東風(Tong poo) 」でシンセで二胡のような音が再現されていて良かった。
追記:長谷川白紙「MALTINE MOLEの時に初めてやった。冒頭のコードだけたぶん3年とか前にあれだけあって、あれにあうメロディが全然見つからなかったんですよ。MALTINE MOLEの2週間前くらいにふとそれを聴いてて、そういえばこんなんもあったなって思って聴いてたら、キューのメロディが乗るなと思ってそれでやった。だいぶあれも癖みたいな、本当に偶然でできて身体性だけでできてるみたいな。で、ふさわしいだろうなと思って、このコンセプトでは。」(12月27日マルチネ放送室β)ここまで

6. はみ出す指
最後のサビ、木琴、白紙さん自身の声での「捕まえて」「誑(たぶら)かして」の掛け合いが好き。

1.横顔S 弾き語り
仮歌かな?練習?正直言ってあまり上手くはない。てか、前半から後半にかけて、Youtube Live、古民家でのライブと何段々上手なってるねん。部屋に入って椅子に座るところから始まったり、実家で家族を気にしながら宅録してる感があるので、これはこれでいいか。「綿の中」の以前サンクラに上がってたバージョン、最後部屋の扉閉まる音で終わってた記憶がある。あれ良かったんだよな。Maltine Recordsバージョンでもなんだけど、この曲はめっちゃ息吸う音が入ってて面白い。ここは一息で歌ってるとかもわかったり。白紙さんは、白紙さんのことを大好きなファンに囲まれたり他のミュージシャンとセッションするときに、一番魅力を発揮できて良いパフォーマンスができているように思う。もちろん白紙さんの努力と才能があってだけれれども、応援して見守ることで更に良くなるというのはファン参加型と捉えることもできて、今っぽくていいんじゃないだろうか。
この時のライブも楽しそうだったし調子よさそうだった。

2.毒 弾き語り
Youtube Live、古民家でのライブでの弾き語りよりぐんとピッチが遅い。演奏よりも声が出ているし、生々しいというか加工せず曝け出してる感。プレゼンでも一般的に人は自信がなく緊張すると早口になる。遅くすればするほど歌い方の細かいところも聴かれるし、このピッチをライブでやるには練習して自信を持てないと難しいのでは。遅いのもの早いのもそれぞれ良さがあるので、ライブセットの組み方とかで今後両方楽しめる機会があれば。
追記:長谷川白紙「(弾き語りは)だいぶ自由にやれる半面エッセンスをうまく抜き出さないといけないのでかなり疲れます。」(12月27日マルチネ放送室β)ここまで

3.肌色の川
「わたしが17歳の夏に書いた曲で、今聴くと特に歌い方が全然違います ちょっとYMOを意識してるんだと思います はずい 」
いやぁ、これがついていたからCD買って良かった。もう2年以上何百回も聴いているから、数小節聴いた瞬間すぐわかった。ピッチが遅い。サンクラにあるのが6:09、特典CDのが6:39、前後に追加されたり削られたりもしていないから13/12くらいに引き伸ばしているのでは。だいぶ雰囲気変わる。長谷川白紙は急いでると言い続けてきて、どこかこういうのを待ち望んでいた。全く予想せずでサプライズだったので喜びが増す。ご本人の案なのか周りの方の提案だったのか、これ以上早くも遅くもなくこのピッチをどう決めたのかとても気になる。大抵の曲早くすれば踊れるの逆で、この曲は本当に良い曲だから引き延ばして拡大して聴いてもやっぱり良いというのが実証された気分。自分なりの解釈ができる歌詞で、感情移入して思いっきり切なくなれる。長谷川白紙と同時に知った曲だから思い入れのある曲、特典ではあるけれどCDと一緒に全国流通、また多くの人に聴かれるのは本当に嬉しい。たった2年ちょっとで長くはないけれど過程を見れて楽しかった。

プロモーションについて、Youtube Liveはあったけれど1回きり、インストアライブもリリパもラジオ出演も無し。レーベルとはCDリリースの契約だけでプロモーションは無しなのか、それともあえてしない戦略なのか。長谷川白紙に限らずだけど、自分でもプロモーションってできるよね。アーティストだからそういうのやりません、苦手なのでできませんはもちろん自由、本当にそう思う。tofubeatsさんでさえ、HARD-OFF BEATSくらい気合の入ったのをされてる。sasukeさんはLouis Cole来日直前にLouis Coleっぽい演奏動画作成してアップしてて、ご本人もご覧になったそう。Dorian ConceptもMySpaceに上げてた演奏動画をFlying Lotusが見つけて発掘されたらしい。長谷川白紙の本気の演奏は、必ず世界の人の目に留まると信じてる。ファンだって、動画があった方が凄さを言葉で説明しなくて済むし人に薦め易い。そんなことをしなくても売れるということなのか、完璧主義で作れないのか知らないけれど、そうこうしている間にも世界の大物に発掘されたかもしれない機会を失ってるかもしれない気がしてもどかしい。あとマネタライズ、長谷川白紙がどこまで本気なのか未だにわからない。例えばかなり前ご本人が楽器購入のクラウドファンディング的なカンパを募っていたけれど、あれはどうなったんだろう。私みたいに様子見してた人もいるはずで、結果と収支報告あった方が次にお願いするときに信頼度が上がったのでは。その半面、投げ銭制の古民家ライブ であっても自分の楽器担いできてきちんと全力でライブする。売れることの優先順位が高いのであれば、もっと広く容易に共感される歌詞でポップで耳に残りやすいメロディに寄せたのでは。結局、お金に関しては口にしているほど貪欲ではないのかなぁと見ている。

今までこの素晴らしいアーティストが音楽で食べていけるためにサポートしなければみたいなのがあったんだけど、前から知ってるとかは関係なく自分が価値があると思う作品とライブに対価を払うように意識が変わりつつある。他の人は知らないけれど、私が求めるのはグッズではなく作品とライブ。タダで聴かせてくれるからグッズ買うというのは違和感。お金はちゃんと出すから、とびきりの忘れられないライブをしてほしい。その作品こそタダで配らなくてもええんちゃうと思うことも多々。一部のコアなファンがどんだけつぎ込んでも、生活させてあげられるくらいは支えきれない。ファンとしては、アーティストが気が付いていない才能や魅力を本人に伝える、偽りなく評価して良いところを伝える、アーティストの価値がわかる人たちに広めること、それが長い目で見たときに大事な気がしてきている。

あえてふざけたタイトルにしてますが、過去作品のまとめ的なエントリです。

先日のライブの様子。

Copyright © 電子計算機舞踏音楽 All Rights Reserved.