trackmakerは、実際どこまで有名になりたいと思っているか?

1年前は、tofubeatsさんや、マルチネのことさえ、全く知らずに生きていた。不思議の国のアリスがウサギを追いかけ、落ちた穴の下には見たことがない奇妙な世界が広がっていたように、tofubeatsさんの情報を追いかけるうちに、聞いたことがない音楽が果てしなく転がっている世界に迷い込んでいた。色んな偶然が重なって、私はこのタイミングで穴に落ちただけで、世の中には、ここにはたどり着けていない、"やや音楽好き"がまだたくさんいるように思う。音楽を聴かなくなったとか、クラブに行かなくなったとか聞くけれど、単にニーズのあるマーケットに音楽が届いていないだけだと思う。

迷い込めたことで見つけたパソコン音楽クラブの音楽は、多額の製作費とプロモーションをかけて作られたメジャーの音楽よりも、私を熱狂させた。パソコン音楽クラブに限らずSoundCloud上やマルチネから無料で提供される音楽に、どっぷりはまったが、それは無料だからではなく、メジャーの音楽よりも満足させてくれたからだ。今やメジャーの音楽だって、YoutubeSpotifyで無料で聴くことはできるので、今や無料であることはそれほどのアドバンテージではない。

SoundCloudやマルチネで無料で聴ける音楽にプロと同じくらい価値を感じているが、学業や仕事をしながら音楽を作っている人とプロとの格差はあまりにも大きい。趣味と考えれば、自分の作りたいもののために、バイトをして機材やソフトを買い、時間を費やして作品を作るのは特別のことではないし、それがたまたま他人を幸せにできているだけのことかもしれない。人を満足させている以上、せめてもう少しだけでも、マネタライズして、作り手に還元できぬものかと、ついつい考えてしまう。その道の人たちがとっくに考えて、チャレンジしているあろうし、簡単ではないことはわかっているけれど。

マネタライズするには、やはりボリューム、ファンの数は必要だろう。イベントやライブに来ている人は、決まった人が多い印象を受ける。その原因は、アーティストを知るチャネルがないことが一番大きい思うが、新しく参加しにくいこともあるように推測する。okadadaさんが、「インターネットがあったら、内輪のまま1万人になれるんや」と言っていた。実際、tofubeatsさんやokadadaさんのファンは、友達を見守るような温かさで応援していて、その温かさがまたファンを呼び込んでいるようにもみえる。その一方、マルチネファンの内輪感、熱狂的なファンの宗教っぽさになじめず、音楽は聴くけれど、それ以上入り込めないというコメントも掲示板で見たことがある。私自身、オタク文化やしきたりをよく理解せず、音楽が気に入っただけでなんとなくズカズカ踏み込んでしまったけれど、タブーを知らずに地雷を踏んだときは、永久追放されるかと思ったし、同じような目にあっている人を何度か目にした。良くも悪くも、異質なものを排除する強い団結力を感じる。

有名になって、ファンの数が増えれば、色々なファンが増えることになる。好きな理由、楽しみ方も様々、歓迎しない人がファンになったりもする。新旧ファンの対立なんかもあったりする。メジャーになれば、売れることを意識しなくてはならず、好きなことができないこともあるだろう。好きなことを仕事にすることのメリット、デメリットは既に議論し尽くされている通りだ。音楽で食べていきたいという人もいるけれど、track makerの人たちは、実際どこまで有名になりたいと思っているんだろうか。

ポコラヂの中で、Tomadさんがマルチネの今後の姿を、草野球チームに例えていた。メジャーに移籍する人もいれば、仕事を続けながら小さなチームで楽しむ人もいる。勝率や来季の去就を気にせず、気の合う仲間だけで楽しくやっていく、実はそれが一番幸せなのかもと思ったりもする。

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